: 私たち夫婦には子供が居ません。自分の死後、自分が親から受け継いだ家屋を配偶者が相続して住み続けるのはいいけれど、更に配偶者が亡くなった時に、元々は自分の(家の)ものであった財産(家)が配偶者の兄弟姉妹に渡るのは嫌なので、何とか自分と血縁関係のある甥に相続させたいのですが、そういう場合、どうすればいいのでしょう?

  : 大前提として、相続によって得た財産も自分自身で築いた財産と同様、あくまでも自分自身の財産であって、相続によって財産を与えた人(被相続人)にはもう、何の権利もありません。
 つまり、貰ってしまえばもう自分の物だから、たとえそれをくれた人であっても、その処分等に関しては口出しされることはない。ということです。
 ですから質問のように、自分の死後に自分の財産を配偶者の兄弟姉妹ではなく、自分と血の繋がった人に引渡したいというのであれば、それなりの手を打っておかなくてはなりません。

 では、具体的にどの様にすればよいのか?
 配偶者にも、もしも自分が先に死に自分の財産が配偶者に渡ったとしても、当の配偶者自身が亡くなった時には自分の指名する人に相続をさせる旨の公正証書遺言書を作っておいて貰う。
 予め、自分が財産を与えたいと思っている人と配偶者(夫婦)とで養子縁組をしておくことで、財産を与えたい人に”子としての地位”を与えておく。
 自分が財産を与えたいと思っている人に、その財産を遺贈(負担付き)する旨の遺言書を作成しておく。

 大体、この三つのパターンが考えられますが、①と②に関しては、ご自身が亡くなった後になってから、当人たちだけで書き換え(遺言書の場合)や離縁(養子縁組の場合)をすることが出来てしまうので、確実性という意味では少々劣ります。
 そこで③の負担付き遺贈が出て来ます。
 例えば、財産が不動産(家)で自分の死後も配偶者がそこに住まなくてはならないような場合には、「財産(不動産=家)は(血筋の)誰々に遺贈するけれども、その(血筋の)誰々は、(遺言者の)配偶者が存命中は配偶者に無償で住まわせる」というような”負担”を付けておくというものです。そうすれば、財産自体は自分の指名した人に継がせる事が出来、同時に存命中の配偶者の生活も守れるという訳です。(もちろん、遺留分に関する配慮は必要ですから、場合によっては配偶者等に遺留分を主張しない旨の約束を取り付けておくことも必要になるでしょう)

 Q : 私は養子なのですが、数年前に養親(養父)と大喧嘩をして家を出て以来、養親とは連絡を取っていません。こういう場合でも、養父が亡くなれば遺産は相続できるのでしょうか? また、養親には私と養子縁組をした後に生まれた実子が居るのですが、やはり、実子が優先的に遺産を相続することになるのでしょうか? 

 A : 養子には、家庭裁判所の審判によって実親との法律上の親子関係が断ち切られる特別養子と実親との法律上の親子関係を維持しつつ養親との親子関係を新たに創設する普通養子の2種類があり、それぞれ養子となるための要件や効果が異なっていますが、どちらも養親(被相続人)の嫡出子としての地位を得ることになるので、実子と共に『第一順位の相続人』となります。(実子と同等の法定相続分や遺留分が認められます) 養子がその嫡出子としての地位を失うのは、離縁をした時だけです。
 また、不仲等の理由により、養親が勝手に離縁届を出してしまった(特別養子の場合には、離縁に際しても家庭裁判所の審判が必要なので、一方的な離縁は出来ませんが)という場合でも、養子の意思に基づかない離縁届は”無効”であり、離縁の無効の審判を行えば遡って養子であり続けたことになります。

 最後に、普通養子は実親との親子関係は養子縁組によっても無くならないので、養子に行った子も、養子に行かなかった子と同様に実親の相続に関して権利を持ちます(普通養子は実親と養親の双方から相続を受けられます)が、特別養子は実親との法律上の親子関係を断つものですから実親の相続人とはならず、養親のみの相続人となります。

 Q : 父親が亡くなりました。その後、兄から現金で100万円とその100万円と引き換えに相続を放棄する旨の記入のある遺産分割協議書が送られてきました。一緒に添えられていた手紙には遺産分割協議書にサインをして実印を捺した上で、印鑑証明と一緒に送り返してほしいとあります。そんなに簡単にサインをしてしまっても良いものなのでしょうか?


 A : 先ず初めに、相続の放棄という場合、法律上はあくまでも家庭裁判所に出向いて申述する(民法938条)という方法によってしか出来ないということです。 しかし、現実には兄弟姉妹などの相続人間で取り交わす遺産分割協議書に「遺産は放棄する」旨の記述があれば、(当事者間では)それで相続の放棄がなされたとして扱ってしまう(思い込んでいる?)場合がほとんどのようです。

 つまり、実社会では”相続の放棄”という言葉は、
     ①本来の法律上の行為である”相続の放棄”(=初めから相続人にならなかった)
     ②相続人間での遺産分割協議(書)による現実の”相続の放棄”(=遺産を貰わない)
 という、2つの意味で使われているということです。

 実際にその場になってみて、例えば田舎の土地を貰えたとしても、滅多に行かない田舎の土地を貰ってもしょうがないので、実家を継いだ「兄に全部あげます(自分は相続を放棄しますから、兄さんが全部相続してください)」と言うか言わないかは本人の自由ですから、その時々の判断で決めればよいことです。法律に則って相続の放棄をするのも遺産分割協議による相続の放棄をするのも、当事者間では変わらないのですから。(相続税のかかるケースでも税金は貰った額に対してかかるので、貰った分以上に相続税の支払い義務が生じるということはありません)

 しかし、ここで一つ注意しなければならないのが、②の相続人間で遺産分割協議(書)によってなされた”相続の放棄”は、法律上は何の意味も持たないということです。 ですから、仮に被相続人(親など)に多額の借金があったという場合には、いくら遺産分割協議書で「相続を放棄する」旨の記載があり、協議書自体が100%完璧に作られていたとしても法律上はあくまでも相続人であって、債権者は相続人各自の法定相続分に応じて、その借金の取り立てができるということです。
 (遺産分割協議上、自分は相続を放棄したのだからもう関係ないと思っていたら、ある日突然、借金の催促をされるなんてあまり気持ちのよい話ではないですよね。

 相続が開始したら、先ずは遺産の内容をしっかりと把握しておくことはその後の無用なトラブルを避ける意味でも、重要なことです。仮に遺産を貰わない場合であっても、場合によってはきちんと家庭裁判所で相続放棄の申述をしておきましょう。

 Q : 私は姉と弟が居ます。先日、父親が亡くなり実家を継いだ私が遺品の整理などを終え久しぶりに兄弟が集まり父の遺産の分配について話し合いをしたのですが、その時になって初めて、兄弟3人とも父から遺言書を預かっていたことを知りました。内容は主に土地・建物の分配に関することでしたが、その中に幾つか兄弟同士で内容の被るものがありました。こういう場合、どの様に処理したらよいのでしょうか?


 A : 遺言書は被相続人の最後の意思表示ですから、原則、その意思は尊重されなければなりません。もちろん、兄弟姉妹を除く推定相続人には遺留分が認められていますからそれを侵すような内容は認められませんが、場合によっては、それが被相続人の意思なのであればその意思を実現させてあげることもまた、相続人(子)の義務と言えるかもしれません。

 さて、ご質問によると兄弟3人が3人とも父親から遺言書を受け取っていたということですが、遺言書の原則として”新しい遺言書が古い遺言書に優先”します。(民法1023条1項・『前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす』)
 ですから、先ず初めにしなければならないことは、それぞれの遺言書の日付を確認することです。 その上で、一番新しい遺言書の内容を実現すれば良いという事になります。

 ここで一つ忘れてはいけないことは、日付の新しい遺言書が優先するとは言っても、新しい遺言書があるということで古い遺言書が全て無効になるというわけではないということです。  つまり、複数の遺言書が発見された場合には先ずは新しい遺言書の内容が優先されますが、その新しい遺言書の内容と抵触しない部分に関しては、古い方の遺言書の内容も未だに有効であるということです。
 別の言い方をすると、古い遺言書と内容的に抵触する新しい遺言書があれば、その新しい遺言書に「前の(古い)遺言書で書いた〜を撤回する」とか「取り消す」という言葉が無くとも自動的にその抵触する部分は新しい遺言書の内容に訂正されたことになりますが、それ以外の部分に関しては新しい遺言書と共に有効なものとして扱われるということです。

 因みに、遺言書の作成年月日が実際の作成年月日よりも何年も先の日付で書かれているような遺言書は、それが明らかになれば遺言書の効力自体が否定される(遺言書は無効)可能性もありますから、遺言書を書くときには日付の記載はきちんと、本当の作成年月日を書くようにしましょう。

 Q : 私には息子が2人居るのですが、一人は10年以上前に家を出たきり何の連絡もありません。私ももう年なので、遺言書を書こうと思っているのですが、遺言書を書くにあたって、ここ数年私と同居し、体が思うように動かなくなった私の世話もしてくれているもう一人の息子に私の全財産を継がせたいと思うのですが、家を出たきりの息子にも遺留分というのがあると聞き、心配になりました。こういう場合どうすればよいのでしょう?


 A : 先ず初めに『廃除』について説明します。『廃除』とは、遺留分を有する推定相続人が被相続人に対して”虐待”、”重大な侮辱”を加えたときや、推定相続人自身に”その他著しい非行”があった場合(民法892条)に、家庭裁判所に請求することで、その本人の相続権を奪うという制度です。
 この『廃除』の制度をご質問のケースに当てはめると、家を出たきりの息子さんのあなたに対する”虐待”や”重大な侮辱”、息子さん自身の”著しい非行”の有無が問題になります。つまり、暴力や侮辱(精神的な暴力)を振るって出て行ったとか、家を出ている間にどこか知らないところで勝手に多額の借金を作ってその肩代わりをさせられたとか、・・・・・そういう事実があれば廃除請求は認められる(家を出た息子さんに子が居なければ、世話をしてくれている息子さんに全財産を残せる)でしょうが、息子さんの暴力の原因があなた自身の態度(挑発的な態度)であったり、侮辱も一時的なものであったりという場合には、『廃除』が認められない場合もあります。(多額の借金の肩代わりなどは十分に廃除の原因になるとは思いますが)

 なお、この『廃除』は被相続人の生前に請求することも出来ますし、遺言書によって死後に遺言執行者によってすることも出来ます。遺言書で行った場合には、『廃除』された相続人は被相続人との関係で被相続人の死亡のときに遡って相続人としての地位を失うことになります。また、もしも本人(家を出た息子)に子供が居ればその子に『代襲相続』されることになります。

 Q : 今度、遺言書を作ろうと考えているのですが、どうせ残すのならば自分の元気な姿を孫たちにも見て欲しいと思い、ビデオで遺言をしようと思うのですが、そういう遺言も認められますか?


 A : 遺言書の作成は民法の規定(自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言、危急時遺言)により、厳格な様式が定められていて、それ以外の方法による遺言書は認められません。ですから、ご質問の『ビデオによる遺言』は、相続人間に争いが生じた場合など何かあったときにはその効力が否定されることになってしまいます。
 とはいえ、例えば自筆証書遺言書を書いている姿をビデオに撮影しておくことは、いざ相続問題が生じた場合などにその遺言書が間違いなく本人が書いたものであることやその遺言書を書いた当時、本人に十分な判断能力があったことの証明にはなるでしょうし、遺言書の内容に関するコメントを付けておけば、遺言書作成に際しての自分の思いや考えを知らせることができるという意味で、決して無駄ではありません。

 また、これはあくまでも相続人側の問題ですが、遺産分割に関しては、争いが無く全員の同意があれば法定相続分或いは遺言書による指定に関係なく相続人がその内容を自分たちで自由に決めることが出来ますから、相続人の方たちがビデオによる遺言の内容通りの遺産分割をしてくれた場合には、ビデオによる遺言が実質的に(表面上)有効となるようなケースもあるでしょう。 

 しかし、原則はあくまでも法律に則った遺言書を作成し、『ビデオ遺言』は遺言書に書けない(書いても法律上意味を持たない)あなた自身の思いや考えを伝える為の補助的なものという認識でいないと後々余計な争いを生むことにもなりかねません。

 遺言書を作る際にはきちんと”法律に則った有効な”遺言書を作るようにしましょう。

 Q : 公正証書遺言書を作る場合には『証人2人以上』が必要だと聞いたのですが、その証人には何か決まりがあるのでしょうか? 私としては信頼している孫娘になって欲しいと考えているのですが、大丈夫ですか。


 A : 先ず初めに、公正証書遺言書の作成に関する要件を見てみましょう。
 公正証書遺言書は①証人二人以上の立会いの下、②遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授し、③公証人が遺言者の口授を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させ、④遺言者及び証人が筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し印を押す。⑤最後に公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押す。という、文章にすると大変に手間のかかる課程を経て、作成されます。

 さて、ご質問にある『証人』に関してですが、法律は証人及び立会人に関して
 Ⅰ)未成年者
 Ⅱ)推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族
 Ⅲ)公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人
 の三者を欠格事項該当者(民法974条)として挙げています。
 つまり、上記の三者以外の人であれば、特別な制限無く、公正証書遺言書の証人になれることになります。

 以上に照らして見ると、『証人』を孫娘に頼みたいとのことですが、孫娘はⅡ)の推定相続人(あなたの子)の直系血族に当たりますから、証人にはなれないことになります。  いくら信頼していても、利害関係の範囲にある人は証人になる資格がないということですね。

 なお、公正証書遺言書を作ろうというときには原案の作成や公証人との打ち合わせ等で専門家に協力してもらうケースが多いので、そういう場合には依頼者の希望により各専門家の方が”信頼できる”証人を用意するのが普通ですから、もし仮に「証人になってくれそうな人がいないから、公正証書での遺言書を作るのは諦めようか?」と考えている様なら、先ずは無料相談などに「証人を用意してくれるのか?」など、問い合わせてみると良いでしょう。

 Q : 私はいわゆる天涯孤独の身です。私が死んだら、私の財産はどうなってしまうのでしょうか。相続人のない財産は国庫に持っていかれると聞いたのですが。

 A : 相続が開始すると、先ずはあなたの戸籍の調査がされます。その結果、本当に相続人が一人も居ないとなると、あなたが生前に借金をしていたとすればその債権者や生前あなたの療養監護をし特別縁故者として財産分与を受けられる可能性のある人といった”利害関係人”又は検察官の請求によって、家庭裁判所により『相続財産管理人』が選任されることになります。
 『相続財産管理人』は、相続財産を管理すると同時に相続人となる人がいるようならばその旨を、また、債権者や遺贈を受けた人がいる場合にはその旨を申し出るよう『公告』します。
 この『公告』期間内に申し出がない場合には、後になって相続人であると申し出たとしても認められない(相続できない)ことになります。
 
 戸籍の調査、相続人等の申し出の公告を経て、相続人が本当に一人も居なかった場合、家庭裁判所は被相続人と特別に親しい関係にあった特別縁故者(被相続人と生計を共にししていた人=事実上の配偶者や養子、被相続人の療養監護に努めた人等)の請求により、残った財産の一部、若しくは全部を分け与えることが出来ます。(この場合には、相続人捜索の公告の期間満了後3ケ月以内に請求しなければなりません)
 以上の手続を経た上で、それでも全財産を引き継ぐべき人がいない場合には、最終的に残った財産が国庫に帰属することになります。(民法959条)
 
 なお、あなたがご自分の財産を引き継いでほしい人が具体的にいる場合には、その人と死因贈与契約を結んでおくか、或いは遺言書によりその人に財産を遺贈する旨を書き残した上で遺言の執行者を指定しておけば、あなたの財産は指定した人に確実に受け継がれることになります。
 
 いずれにしても、ご自分の力で苦労して築いた財産ですから、あなたが亡くなった後もあなたの遺志が反映される様、遺言書を作るなり特定の人と死因贈与契約を結ぶなど、ご自分の意思を形にして残し置くことは重要なことです
 公証役場まで行って、時間とお金のかかる公正証書遺言書を作るのはどうも嫌だいというのであれば、自筆証書遺言書で十分です。①全文を自書②日付を入れる③署名・押印するという要件だけしっかりと押えておけば、先ずは安心です。
 その上でまだ「心配だ」と思ったら、専門家の無料相談を利用するのもいいでしょう。

 Q : 父は生前、海外赴任中の私に代わって介護の必要な母の面倒を見ることを条件に、信頼していた叔父に財産の半分を譲る旨の公正証書遺言書を作りました。しかし、現実には叔父は母の面倒をほとんど見ることなく、大学生の妹が授業の合間をぬって母の介護をしています。こういう場合、叔父から父が譲った財産を取り戻すことは出来ますか?

 A : 叔父さんに対する『負担付き遺贈』の負担の履行に関する問題ですね。負担付き遺贈は言葉通り、一定の負担を負う(一定の行為をすることが財産受領の条件となる)遺贈ですから、負担付き遺贈の受遺者は”財産の価額を超えない範囲で”義務の履行を果たす責任があり、その義務が履行されない場合には、相続人は『相当の期間を定めてその負担の履行を催告し、その期間内に履行がない場合には、その負担付き遺贈に係る遺言の取消を家庭裁判所に請求することができる』ようになります。
 
 また、ご質問の叔父さんが『自分の家庭のことで精一杯で他まで面倒は見られない』等の理由で、自分から負担付き遺贈を”放棄”したというような場合には、遺言書に特別にそういう場合の対応等が書いていない限りは、お母さん(負担の利益を受けるべき者)自身が受遺者(負担付きで叔父さんに譲られるはずだった財産の受取人)となることも出来ます

 なお、遺贈を定めた遺言の一部、若しくは全部が取り消された場合には、その財産は相続人全員の共有状態となりますから、改めて遺産分割協議を行い財産の取得者を決める必要があります。

 Q : 以前に自筆証書遺言書を作ったのですが、内容を一部変えたいと思っています。その場合、どの様に直せば良いのでしょうか?

 A : 自筆証書遺言書の訂正に関してですが、この場合には普通の契約書などの訂正よりも厳格な方式が定められています。以下、手順を書いておきますが、作成時と同様、“自筆”が大前提です。
 ①遺言書に加除・変更する場所を指示し、
 ②その部分に加除・変更した旨を付記し、
 ③その付記したところに署名をし、
 ④加除・変更したところに押印する。

 特に“署名”に関しては、一般の契約書等では要求されていないところなので忘れないよう注意が必要です。

 ご質問では、遺言書の作成時の訂正ではなく、一度作った遺言書に後日訂正を加えたいということですから、むしろ新しく遺言書全体を書き直した方が、間違いもなく確実かもしれませんね。 その場合、古い方の遺言書を破棄しない限りは遺言書が二通存在することになりますが、古い方の遺言書の内容と抵触する部分は新しい方の遺言書により撤回されたものとして扱われますから、法律上は特に『〜に関しては撤回して、新たに〜とする』などと書かなくとも良いことになっています。

 なお、同じように“自分で書く”秘密証書遺言書の訂正も自筆証書遺言書と同様の訂正方法で構いませんが、既に公証役場に持っていって作ってしまったものに関して訂正を加える訳ですから、訂正のために一度開封してしまう関係上、再度、秘密証書遺言書にしようと思うのならば、改めて公証役場に出向いて手続をする必要があります。

 Q : 父が生前に公正証書遺言書を作ったことは本人から聞いて知っていたのですが、父が亡くなり、いざその遺言書を探してみるとどこにもありません。本人がそう言っていたのだから作ったことは間違いないと思うのですが、何か調べる方法はありますか?

 A : 公正証書遺言書を作る長所の一つが、その原本が半永久的に公証役場に保管されるということです。ですから、遺言者にとっては遺言書の偽造・変造・紛失・破棄・隠匿といったおそれはまずなく、遺言の内容が確実に実行されるという安心感があります。  
 さて、あるはずの公正証書遺言書が見付からないとのことですが、その場合、相続人は相続の開始後、公証役場に行き相続人であることを証明し、遺言者の生年月日、氏名、本籍を公証役場に告げれば、公正証書遺言書が確かに作られているかどうかを調べてもらえますし、作られているのならばその内容を知ることもできます。
 因みに、現在は公証役場でもコンピュータ化が進み公正証書遺言書の内容もコンピュータに記録されていますから、全国どこの公証役場であっても公正証書遺言書の有無及び内容の確認が出来るようになっています。

 余談ですが、同じ公証役場で作る遺言書であっても『秘密証書遺言書』の場合には、公正証書遺言書のような確認のシステムはありません。 実際に秘密証書遺言書を作る人はあまりいないので問題は無いと言えば無いのかもしれませんが、こちらは相続人などの関係者が“あるはずの遺言書”を見付けられなかったとしても、公証役場にも記録は残されていませんから、内容は元よりその有無を確認することも出来ません。 


 遺言者・相続人の双方の利便や安全性を考えれば、やはり遺言書は公正証書でしっかりと作っておく方が間違いが無く、安心・確実な相続に繋がるということですね。

 Q : 後年、体が不自由になった父は献身的に介護をしていた私の妻に財産の一部を遺贈する旨の遺言書を残して亡くなりましたが、妻は父の亡くなる2カ月前に交通事故で亡くなっています。こういう場合、妻に遺贈されるはずだった財産はどの様に処理すれば良いのでしょうか? なお、遺言書があることは父が亡くなるまで誰も知りませんでした。

 A : 遺贈の受遺者が遺言者よりも先に亡くなってしまったということですね。こういう場合、法律はその遺贈の効力を認めていません。(民法994条=『遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない』) つまり、遺贈は初めから無かったものとして扱われ、受遺者に送られるはずだった財産は相続人のものとなります。
 ですから、あなたの奥さんに遺贈されるはずだった財産は、お父様の相続人であるお母様、あなた、そして兄弟がいればその兄弟等がその他の財産と一緒に譲り受けることになります。

 なお、遺贈に関しては相続で見られた『代襲相続』のような制度はありませんから、その点では権利関係がややこしくなる心配はありませんが、遺贈する側(被相続人)としては、このような事態に備え『〜(財産)は××に遺贈する。但し、××が自分よりも先に亡くなるなど、受け取ることができない場合には、その子に遺贈する』旨の遺言は有効(民法994条2項ただし書=『遺言者がその遺言に別段の意思表示をしたときは、その意思に従う』)ですから、もしも遺贈の相手(受遺者)の健康・年齢等に不安があるような場合には、遺言書の作成にあたっては前記のような条項を加えることも考える必要があります

 Q : 公正証書遺言書を作るには“証人二人以上”が必要だと聞きましたが、実際に作る場合にはそれ以外にも準備しなければならないこと(もの)があると思います。具体的に、他にはどんなものが必要でしょう。また、公証人の手数料は幾らくらいになりますか? 

 A : 公正証書遺言書の作成というと先ず、二人以上の証人が必要という要件ばかりに目が行ってしまい、証人さえ揃えればもう出来上がったかのように思われがちですが、あくまでも“二人以上の証人”とは要件の一つです。実際に公正証書遺言書を作る上ではまだ、他にもやらなければならないことはあります。

 では、くどいようですが、公正証書遺言書作成の要件を簡単におさらいしておきましょう。
 公正証書遺言書は、①二人以上の証人の立会いの下、②遺言者が遺言の内容を口授(口頭で述べる)し、③公証人がこれを筆記し、遺言者と証人に読み聞かせ、又は閲覧させ、④遺言者及び証人が筆記の正確なことを確認した後、各自署名・押印し、⑤最後に公証人が、その遺言書が法律の求める要件に従って作成されたものであることを付記して、これに署名・押印する。 というものです。

 さて、公正証書遺言書の作成に必要なこと(もの)です。
 ①遺言書の原案(公証人との打ち合わせを含む)。
 ②公証人に対し本人を確認する為の実印、及び印鑑証明書戸籍謄本。それから財産の価額を計算する為の書類(不動産であれば固定資産税評価証明書、或いは納税通知書等)。
 ③遺言書の内容によっては、②以外の書類が必要な場合があるので、公証人の指定するその他の必要書類
  以上が、最低限必要と思われるものです。  その他はその都度、公証人に相談するなり、指示に従えばよいでしょう。

 次に公証人の手数料に関してですが、これは遺産の価額により変わってきます。 以下、具体的に見ますと、

 目的の価額が  100万円までの場合   手数料は  5,000円
 目的の価額が   200万円までの場合   手数料は  7,000円
 目的の価額が 1,000万円までの場合   手数料は 11,000円
 目的の価額が 3,000万円までの場合   手数料は 23,000円
 目的の価額が 5,000万円までの場合   手数料は 29,000円
 目的の価額が    1億円までの場合   手数料は 43,000円

 なお、目的の価額が1億円を超え、3億円以下の場合には、43,000円に5,000万円までごとに13,000円を加算。

     目的の価額が3億円を超え、10億円以下の場合には、95,000円に5,000万円までごとに11,000円を加算。

     目的の価額が10億円を超える場合には、24万9,000円に5,000万円までごとに8,000円を加算。
(相続人が複数いる場合には、財産を貰う人ごとに目的の価額と手数料を計算して、それを合算する形で手数料が決まります)
 なお、遺言の場合、通常の手数料とは別に『遺言加算』として一律に11,000円がかかりますが、目的価額の合計が1億円を超える場合には、遺言加算はかかりません。
 この他に
 正本・謄本を取る場合には、枚数によりますが大体2,000円。
 公証人に来てもらう場合には ①病床執務加算(通常手数料の1.5倍) ②日当(4時間以内1万円) ③交通費の実費
が掛かります。

 Q : 父が亡くなり、遺言者が無かったので、母と兄弟4人で既に3回も遺産分割協議をしたのですが話し合いが付きません。どうしたらよいでしょう?


 A : ご相談のような場合には、相手方(調停を申し立てられる側の相続人)の住所地を管轄する家庭裁判所に対して、先ずは『調停』を申し立てることになります。
 調停とは裁判官である家事審判官1名と調停委員2名で構成される調停委員会が主宰するもので、審判官の定める方針の下、調停委員が申立人、相手方から交互に話を聞き、法律に照らし助言・説得をすることで双方の合意を目指すというものです。 最終的な目標は“双方の合意”ですから、相続人の中に一人でも合意案に納得しない人が居るようならば調停は成立しません。

 しかし、ここで合意が成立し家庭裁判所が調停調書を作成すると、この調停調書には確定判決と同じ効力がありますから、当事者全員を拘束しますし、調停調書に基づいて強制執行することも出来ます。

 次に、遺産分割調停が成立しない場合には、調停の申し立ての時に遺産分割の審判の申し立てが成されたものとみなされ、『審判』手続きに移行します。
 遺産分割審判では、遺産の価額、特別受益・寄与分の有無・価額、更には遺産に属する物または権利の種類・性質、各相続人の年齢・職業・心身の状態及び生活の状況その他一切を考慮した上で、法定相続分を基に裁判官が妥当な分割を決めます
 なお、家庭裁判所は必要があれば職権で事実に関する調査をすることが出来ますし、当事者は審判の内容に不服がある場合には、即時抗告という不服の申し立てをすることも出来ます。

 Q : 私は会社に入社以来ずっと海外の支社勤務が続いており、日本に帰るのは年に数回で、しかも3〜4日しかありません。今度、遺言書を作りたいと思っているのですが、こんな状況なので外国で作らざるを得ません。何か注意点などあれば教えてください。


 A : 自筆証書遺言書を作るのであれば、法律の規定する要件(①全文を自書し、②日付を入れ、③署名・押印する)さえ満たしていれば、たとえそれが船の上であろうと空の上であろうと、もちろん外国であろうとその効力は変わりません。  ただ、自筆証書遺言書の弱点である偽造・変造・破棄・隠匿・紛失等の危険は国内にいる場合よりも更に高まる可能性はあるでしょう。

 そういう意味からも、国外で作るのであれば尚更、多少の手間はかかっても安全性の高い『公正証書遺言書』の作成をお勧めします。
 とはいえ、外国に日本の公証人が事務所を開いている訳もありませんし、いくら公証人が病気の人などに対しては出張をしてくれるからといって外国まで呼び出すわけにもいきませんよね?
 そこで、国外で公正証書遺言書を作る(秘密証書遺言書の場合も同様)場合には、その国の主要都市にある日本の領事が公証人の職務を行うことになっている(民法984条)ので、領事に依頼して作ることになります。

 なお、船に乗船中に作る場合には、船長又は事務員1人及び証人2人以上の立会いのもとで遺言書を作ることが出来ます(『船舶隔絶地遺言』民法978条、980条)が、こちらは船を下りた後、普通方式での遺言書を作ることができるようになってから6ヶ月間生存していると、その効力が失われます(民法983条)から、新たに作り直す必要があります。 
 また、病気その他により死の危険が迫っているような場合には『死亡危急時遺言』(民法976条)という方法もあります。こちらは証人が3人以上必要なことに加え、遺言の日から20日以内に家庭裁判所に『確認』を得るなどの手続が必要ですが、船舶に乗船中だとか外国にいるなどの場所的な要件は無く、どこにいてもできます(普通方式の遺言書を作ることができるようになってから6ヶ月間生存すると効力を失う点は船舶隔絶地遺言と同じです)。

 最後に、遺言作成時に居住している国の法律に従って遺言書を作るということも可能です。  しかし、いちいちその国の法律をひも解いて遺言の条件を洩らさず理解したうえで、間違いなく、確実に遺言書を作るのは大変困難なことですし、そもそもそれが出来たとしても、いざその遺言書が効力を持つようになったときに今度はそれを日本の法律に照らしてその内容が本当に有効なのか否かが争われる可能性があるなど、何かと不安がつきまといますから、あまり良い方法とは思えません。

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 : (東)行08第445号
社会福祉士登録番号 
 : 第167630号

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