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事例 : 吉川次郎兵衛さんという方が残した自筆証書遺言書には、その氏名として『吉川次郎兵衛』というフルネームではなく、『をや(親)次郎兵衛』と書かれていました。そこで、甲さん、「この遺言書は氏名自書の要件が欠けているから無効だ」としてその遺言書の無効の確認を求めて訴えたという裁判です。
裁判所は、「民法が氏名の自書を要件としたのは、誰が遺言者であるかを明確にする趣旨であるから、氏名の自書とは、遺言者が誰かについて疑いを入れない程度において完全にその表示をすることを要すると解すべきである」とした上で、「もし、他に同一氏名の者があって混同を生ずる場合には、住所・爵位・称号・雅号などの付記を必要とすることがあり、他人と混同を生じない場合にあっては、氏名を併記せず、氏または名を自書するだけで十分である」と言って、訴えを退けました。 (甲さんの負け)
要するに、遺言書における”氏名自書”とは、あくまでも本人確認(確定)のためになされるものであるから、本人確認(確定)さえ出来れば、戸籍上の氏名だけでなく、住所・爵位・称号・雅号といった名前以外であっても問題はないという事です。
これをもう少し広げて考えてみると、遺言書を書いたのが本人であることの確認(確定)さえ取れれば、自筆証書遺言書の氏名には、以上の住所・爵位・・・以外にも”ペンネーム・芸名・通称・屋号”といったものまで含まれるということになります。
とはいえ、基本的に自分ひとりで作る自筆証書遺言書では、ただでさえ、後々になって誤解や色々な解釈ができるような紛らわしい表現をしてしまう可能性が高いのですから、”避けられる危険”は避けるのが、”争続”回避には不可欠です。 ですから、基本は戸籍上の氏名(住所と共に・・・同一住所に同姓同名の人が住んでいることは先ずないので、間違いなく本人と確認(確定)できます)を入れておくことは必要だと思います。
もし、どうしてもペンネームや爵位、芸名、雅号・・・といったもので遺言書を作りたいのであれば、先ずは氏名のところにペンネーム等を書き、その脇に括弧書きで ”本名・某 誰兵衛”と、戸籍上の氏名を書き加えておけば良いでしょう。
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